画像に CMYK 分版・網点・版ズレ・インキのムラ・紙の質感を掛けて、オフセット印刷や新聞、リソグラフのような刷り上がりの見た目へ近づけます。加工結果は元画像と並べて比べられます。
基本
このツールでできること
読み込んだ画像を版ごとのインキ量へ分け、線数と角度の違う網点で刷り直したように描き直します。刷り方は CMYK 4色・モノクロ1色・スポット2〜3色(リソグラフ風)の 3 種類で、オフセット印刷(コート紙)・新聞印刷・同人誌モノクロ本文・リソグラフ2色・レトロ印刷のプリセットがあります。版ごとの角度とずれは 1 枚ずつ手で決められます。結果は刷り幅と出力解像度で決まる実寸の PNG、設定は JSON で書き出せます。
作画のどの工程で使うか
- 同人誌の表紙やグッズのモックアップを、刷り上がりの雰囲気で見せたいとき
- 網点の粒立ちや版ズレを、意図した表現として絵に取り込みたいとき
使い方
- まずプリセットから近い刷り方を選び、そこへ画像をドロップします。
- 「刷り方」で CMYK 4色・モノクロ1色・スポット2〜3色を切り替えます。スポットのインキ色は一覧から選ぶほか、色見本で自由に指定できます。
- 「網点」で線数・刷り幅・網点形状・ドットゲインを調整します。刷り幅を狭くすると網点が拡大表示になります。
- 「版と紙」のパネルで版ズレ・濃度ムラ・かすれ・紙の色と質感を足します。
- 版の一覧では、版ごとの角度とずれを直接入力できます。触った版だけが自動配分から外れ、「版の調整をリセット」で元に戻せます。
- プレビュー右上の 加工後 / 元画像 / 左右分割 を切り替えて、加工の強さを見比べます。
- 「注意」に出ている診断を確認してから、「高解像度で書き出し」で PNG を、設定を JSON で書き出します。
入力項目の意味
- 線数(lpi)
- 1 インチあたりに並ぶ網点の数です。値が大きいほど網点は細かくなります。オフセットのコート紙で 175 線、新聞で 85 線、同人誌のモノクロ本文で 60 線前後が目安です。
- 刷り幅
- この画像を実際に何 mm 幅で刷るかです。線数と合わせて網点 1 個が画面上で何 px になるかが決まり、出力解像度と合わせて書き出す PNG の画素数も決まります。
- ドットゲイン(50%網のTVI)
- 紙の上でインキがにじみ、網点が太って濃く刷り上がる現象の強さです。入力する値は「50%網が刷り上がりで何%濃くなるか」(TVI)そのもので、印刷の現場でも規格でもこの 50% の網点で測ります。実測の目安はオフセットのコート紙で +14%、上質紙で +22%、新聞用紙で +26% 前後です。リソグラフとレトロ印刷のプリセットは規格値が無いため、それより濃い演出値を入れてあります。0% と 100% の被覆はそのままで、中間調だけが濃くなります。
- 版ズレ(ずれ量・ばらつき)
- 版どうしの見当が合っていない量です。CMYK ではスミ版を基準にするので、線画は動かず色版だけがずれます。
- 版ごとの角度・ずれ
- 版の一覧で 1 枚ずつ上書きできる値です。角度は ±90 度、ずれは ±3mm まで指定できます。入力しなかった版と項目は、これまでどおり「ずれ量」「ばらつき」と乱数シードから自動で決まります。
- 濃度ムラ・かすれ
- インキの乗りが場所によって変わる度合いと、ベタが擦れて抜ける度合いです。ムラの粒は、ムラの模様の大きさを mm で指定します。
- サンプリング
- 1 出力ピクセルあたり何点を評価するかです。2 以上にすると、回転した網点格子と画面のピクセル格子が干渉して出る偽のモアレが消えます。
結果の読み方と CLIP STUDIO PAINT への持ち込み方
プレビューと書き出し結果の読み方
- 「版と紙」の版の一覧には、版ごとのスクリーン角度とずれ量が出ます。版ズレはベタ面では見えず、絵の輪郭と画像端でだけ現れます。
- 網点が見えず細かい縞だけが出るときは、網点が解像していません。線数を下げるか、刷り幅を小さくして拡大表示にするか、プレビュー上限を上げてください。「注意」にも同じ診断が出ます。
- 「高解像度で書き出し」は、プレビューではなく刷り幅と出力解像度から決まる実寸(210mm を 300dpi なら 2480px)で刷り直し、その解像度を PNG に書き込みます。寸法はボタンの上に出ます。大きな画像では数十秒かかります。
- スポット2〜3色では黒がベタ黒にならず濃紺に寄ります。これは 2 色では中性の黒を作れないという物理的な帰結で、リソグラフの見た目そのものです。
CLIP STUDIO PAINT での使い方
- 書き出した PNG は、CLIP STUDIO PAINT の[ファイル]メニュー→[読み込み]→[画像]で選ぶと、編集中のレイヤーの上に画像素材レイヤーとして配置されます。Windows / macOS では、[レイヤー]パレットへ直接ドラッグ&ドロップしても同じように読み込めます。
- 位置やサイズを直すときは、[操作]ツールの[オブジェクト]サブツールでその画像素材レイヤーを選び、表示されるハンドルをドラッグして移動・拡大縮小・回転します。画像素材レイヤーは描画ツールで直接描き込めないため、描き込みが必要なら[レイヤー]メニューの[ラスタライズ]で通常のレイヤーに変換してください。
- 元の絵の上に重ねて馴染ませるときは、[レイヤー]パレット上部の合成モードと不透明度を調整します。表紙のデザインや SNS 投稿用の加工絵のように、下のレイヤーと組み合わせて 1 枚に仕上げる場面で使います。
- この PNG は刷り上がりの見た目を再現したものであり、印刷入稿の原稿としては使わないでください。すでに網点が入った画像を入稿用データへ変換すると、印刷所側の製版でかかる網点と二重になりモアレの原因になります。入稿データは元の絵から作り、入稿前には印刷プリフライトで確認してください。
- 「高解像度で書き出し」は、網点の粒立ちまで見せたいときや、表紙・グッズのモックアップを実寸で確認したいときに使います。読み込んだ側でも刷り幅どおりの寸法で開きます。ブラウザ上で見た目を確認するだけならプレビューのままで十分です。
仕組みと制約
網点とインキの処理の根拠
網点は「セル中心からの距離がしきい値より近ければ着肉する」1 本の式で描きます。距離の測り方は円ならユークリッド、四角なら最大値、菱形なら和です。しきい値は、その距離の分布から面積が要求どおりになる値を逆算した表を引きます(セルの一辺 s、被覆率 a として、点が隣と接するまでは円で r = s × √(a÷π))。50% で極性を反転しないので、49.9% と 50.1% で網点が入れ替わらず、円でも 100% 指定が実面積 100% です。ドットゲインは半径の拡大ではなく被覆率のカーブで表します。式は 被覆率 + (TVI ÷ 100) × sin(π × 被覆率) で、sin が両端で 0 になるため 0% と 100% は動かず、50% では入力した TVI ぶんだけ濃くなります。増分の山が 50% にあり 25% と 75% ではその 0.707 倍になる形で、実測の TVI カーブの形と一致します。上限を 30% にしているのは、これを超えるとカーブが単調でなくなり、濃くしたのに暗部が薄くなる階調の逆転が起きるためです。CMYK のスクリーン角度は 15° / 75° / 0° / 45° で、4 版のモアレが最小になる古典的な配置です。色は理想インキモデルではなく、線形光での透過率の積として合成します。この方式にすると C+M+Y のベタが純黒ではなく暖色寄りの濃い茶黒になり、実際の掛け合わせと同じ濁りが出ます。
精度と対象外のこと
網点・インキ・紙の再現は、見た目を近づけるための簡易モデルです。実際の刷り上がりは印刷機・用紙・製版条件で変わります。入稿判断には使わず、印刷プリフライトで確認してください。色校正の代わりにもなりません。
- 分版に使う CMYK 推定は sRGB 前提の近似式で、ICC プロファイルによる厳密な変換ではありません。黒を 4 色で作るため、理論上の総インキ量は入稿基準を超えます。
- AM スクリーン(規則的な網点)だけを扱います。FM スクリーンやハイブリッドスクリーンは再現しません。
- 書き出しの画素数にはメモリの上限があり、超える指定では実効解像度を下げます(下げた値は事前に表示します)。
画像・入力データの扱い
画像の読み込みも加工もすべてブラウザ内で行い、画像を外部に送信することはありません。重い処理は同じブラウザ内の Web Worker で実行しているだけで、通信は発生しません。加工設定は localStorage に保存され、読み込んだ画像は保存されません。
よくある質問
網点が見えず、細かい縞模様だけが出ます。
線数に対してプレビューの解像度が足りず、網点が解像していない状態です。線数を下げるか、刷り幅を小さくして拡大表示にするか、プレビュー上限を上げてください。「注意」にも同じ内容が出ます。
このツールで加工した画像をそのまま入稿できますか?
できません。見た目を近づける簡易モデルで、すでに網点が入った画像です。入稿するデータは元の絵から作り、印刷プリフライトで確認してください。
インキの色を変えたら、絵がほとんど出なくなりました。
紙とほとんど同じ色のインキは、ベタで刷っても紙と見分けが付きません。分版もその版のインキ量を決められなくなるため、「注意」で知らせています。インキをもっと濃い色にするか、紙の色を薄くしてください。
以前に保存した設定を開いたら、ドットゲインの数値が変わっていました。
ドットゲインの入力を「50%網のTVI(%)」へ改めたためです。以前は意味の読めないカーブの係数を入力していて、既定値 0.08 が実際には 50%網 +2% しか濃くしておらず、コート紙の実測(+14% 前後)に対して大幅に不足していました。保存済みの設定と書き出した JSON の値は、刷り上がりが変わらない新しい数値へ読み替えています(係数 0.08 なら +2%)。実測どおりの濃さで見るには、プリセットを選び直してください。
同じ設定なら毎回同じ結果になりますか?
なります。版ズレのばらつき・濃度ムラ・かすれ・紙目はすべて乱数シードから決まります。
CLIP STUDIO PAINT の入手について
CLIP STUDIO PAINT とはどんなソフトか
CLIP STUDIO PAINT(クリップスタジオペイント)は、株式会社セルシスが開発しているイラスト・マンガ・アニメーション制作用のペイントソフトです。汎用の画像編集ソフトとの違いは、ペン入れに向いた筆圧設定、コマ割りとフキダシ、トーン、3D 素材、パース定規といった、紙と印刷を前提にした制作機能が最初から入っている点にあります。Windows・macOS・iPad・iPhone・Android・Chromebook で動きます。
体験版と購入の選択肢
- 公式サイトで無料の体験版が配布されています。描き味と必要な機能を自分の環境で確かめてから判断できます。
- グレードは PRO と EX の 2 つで、複数ページのマンガ原稿を 1 つの作品としてまとめて扱う機能が要るかどうかが主な分かれ目です。
- 買い方は買い切りの一括払いと、月額・年額のプランがあります。使える端末の種類と台数はプランによって変わります。
- 価格・プランの構成・対応端末は改定されることがあるため、最新の条件は公式サイトで確認してください。
このツールと CLIP STUDIO PAINT の関係
このページのツールはブラウザだけで動くので、CLIP STUDIO PAINT を持っていなくても計算や書き出しはそのまま使えます。ただしここで得られるのは CLIP STUDIO PAINT へ持ち込むための材料で、書き出した PNG をレイヤーとして重ね、絵として仕上げる工程は CLIP STUDIO PAINT の側で行います。考え方の部分は他のペイントソフトにも流用できますが、数値と書き出しは CLIP STUDIO PAINT に合わせて作ってあります。