入稿用に書き出した画像をブラウザへ読み込み、総インキ量・解像度・塗り足し・黒の作り方を、指定した入稿条件と突き合わせて診断します。どこが危ないのかを絵の上で確認できます。
基本
このツールでできること
PNG や JPEG を読み込むと、入稿条件(仕上がりサイズ・塗り足し・セーフマージン・必要解像度・総インキ量上限・用紙タイプ)に照らして問題点を一覧にします。ファイルのヘッダからは埋め込み dpi・色モード・ICC の有無も読みます。モノクロ原稿では、階調の持ち方・周期網点の線数と角度・最も細い線の幅を原寸の画素から検査します。本文をまとめて読み込めば 1 ページずつ解析して一覧表にし、結果は JSON・Markdown・HTML とヒートマップ PNG に書き出せます。
入稿のどの工程で使うか
- 入稿直前、書き出した画像が印刷所の指定を満たしているかの最終確認
- 暗い背景や濃い黒の絵で、インキが乗りすぎていないかの確認
- 断裁線の近くに文字やロゴが無いか、塗り足しまで絵が伸びているかの確認
- モノクロ原稿の2値化のし忘れ・細すぎる線・トーンの線数の確認
使い方
- 「用途プリセット」から近いもの(同人誌カラー表紙・モノクロ漫画本文など)を選びます。
- 仕上がりサイズ・塗り足し・セーフマージン・必要解像度・総インキ量上限を入稿先の指定に合わせて直します。
- モノクロやグレースケールで入稿するときは「モノクロ原稿検査」を入れます(モノクロ漫画本文のプリセットでは既定で入っています)。
- 画像を読み込みます。ドラッグ&ドロップでもファイル選択でも構いません。本文をまとめて確認したいときは、複数のファイルを一度に選べます。
- 診断結果パネルの判定を見て、警告を上の「致命的」から順に確認します。複数ページなら、ページ一覧の行をクリックして 1 ページずつ見ます。
- プレビューの TAC ヒートマップで危ない場所を絵の上で特定し、必要なら JSON / Markdown / HTML のレポートやヒートマップ PNG を書き出します。
入力項目の意味
- 用途プリセット
- 5 種類あり、選ぶと仕上がりサイズ・必要解像度・塗り足し・総インキ量上限がまとめて切り替わります。
- 塗り足し
- 仕上がりサイズの外側へ伸ばす余白です。断裁のずれで紙の白が出ないようにするもので、一般的には 3mm が指定されます。
- セーフマージン
- 仕上がり線の内側で、重要な要素を置かないほうがよい幅です。ここに強いコントラストが多いと警告が出ます。
- 必要解像度
- 入稿先が指定する dpi です。仕上がりサイズと塗り足しから必要なピクセル寸法が出ます。
- 総インキ量上限(TAC)
- C+M+Y+K の合計の上限(%)です。超えるとインキが乾かず裏移りの原因になります。合否判定には使わず、ヒートマップの色付けと超過面積の集計だけに使う参考値です。
- 用紙タイプ
- 推定に使う色再現の傾向です。選ぶと中間調の沈み込み(色域圧縮)と墨版の寄せ方が変わります。ICC プロファイルではないので規格名では選びません。
- モノクロ原稿検査
- 階調の持ち方・周期網点・最小線幅を原寸の画素で調べる検査です。1 ページに 1 秒前後かかるため、カラー原稿では既定で切ってあります。
結果の読み方と CLIP STUDIO PAINT への持ち込み方
結果の読み方
- 判定は「入稿不可 / 要修正」「要確認」「入稿可」の 3 段階、警告は「致命的」「要確認」「参考情報」の 3 段です。致命的から順に確認します。
- 「参考情報」に並ぶのは「前提」区分の警告で、解析の仮定(簡易推定・sRGB とみなした・透明部分を白に合成した)の但し書きです。総合判定には数えないので、直す項目が無ければ「入稿可」になります。
- 最大TAC・平均TAC・参考上限の超過面積は、このツールが仮定した分版での参考インキ量で、入稿先の上限に対する合否ではありません。色域圧縮の差分は画面の色と CMYK 推定色との距離です。
- リッチブラック・高インキ量の黒は、墨版の下に有彩インキが重なっている暗い画素の割合です(K 主体の黒は数えません)。細い線や小さな文字では版ズレでにじみます。
- モノクロ原稿検査の「階調」は 2値・ほぼ2値(アンチエイリアス)・グレースケール・彩度のある画素が混在の 4 つで、エッジの周りだけの中間調をアンチエイリアスと推定します。「周期網点」は推定で断定ではなく、線数と角度は「確認すべき可能性」として CSP のトーン設定と突き合わせます。「最小線幅」は網点に見える領域を除いて測った最も細い線で、出力時 0.1mm を下回ると警告が出ます。
- 「ファイルから読んだ情報」で読めなかった項目は「不明」と出ます(推測で埋めません)。Markdown レポートは入稿前チェックリストの形なので、そのまま人に渡せます。
CLIP STUDIO PAINT での直し方
- 解像度が足りないとき
- [編集] メニュー→[画像解像度を変更] で拡大しても、[超解像(スマートスムージング)] は荒れを抑えるだけで描き込みは増えません。原稿の .clip まで戻り、[ファイル]→[新規] の [作品の用途] で(EX 限定の)[同人誌入稿] を選び、モノクロなら 600dpi か 1200dpi、カラーかグレーなら 350dpi か 600dpi で書き出し直すのが確実です。
- 塗り足しが足りないとき
- [編集] メニュー→[キャンバスサイズを変更] で基準点を中央に置いたまま広げ、外側へ絵を継ぎ足します。作り直せるなら [ファイル]→[新規] で [同人誌入稿] を選び、[製本(仕上がり)サイズ] を仕上がり寸法に合わせて [裁ち落とし幅] を 5mm か 3mm にすれば、仕上がり線と裁ち落とし線が最初から出ます。
- 2値のはずがアンチエイリアスと出たとき
- ツールプロパティで [アンチエイリアス] を切って描き直すか、書き出し設定の [表現色] を [モノクロ 2 階調] にしてしきい値を決めてから書き出します。トーンにしたいグレーは、レイヤープロパティの [トーン] をオンにして網点化します。
- CMYK で確認して書き出すとき
- [表示] メニュー→[カラープロファイル]→[プレビューの設定] でプロファイルを選び、同じメニューの [プレビュー] をオンにすると、RGB の画面のまま CMYK に近い見え方を確認できます(ソフトプルーフ)。書き出しは [ファイル]→[画像を統合して書き出し] で指定形式(psd など)を選び、[表現色] を CMYK、[ICC プロファイルの埋め込み] をオン、[出力サイズ] を解像度指定で必要 dpi にします。細かい指定は入稿先を優先してください。
![[キャンバスサイズを変更]ダイアログ。左に[幅]と[高さ]の入力欄、その右に[単位]の px、下にキャンバスをどこを起点に伸縮させるかを選ぶ 3×3 の[基準点]グリッド、右端に[OK][キャンセル][リセット]のボタンが縦に並んでいる。](/articles/canvas-size-ja.png)
![ペンツール選択時の[ツールプロパティ]パレット。上にツール名と線のプレビュー、下に[ブラシサイズ]12.0、[不透明度]100、[アンチエイリアス]の[無し][弱][中][強]の 4 つのボタン([弱]が選択されている)、[手ブレ補正]が並んでいる。](/articles/tool-property-antialias-ja.png)
![[カラープロファイルプレビュー]ダイアログ。上から[キャンバスのプロファイル]、[表示用プロファイル]、[レンダリングインテント]、[使用ライブラリ]、[色調補正]のトーンカーブ、最下部に[設定の適用範囲]が並んでいる。](/articles/color-profile-preview-ja.png)
仕組みと制約
計算の根拠
CMYK 推定は sRGB 前提の簡易式です。各チャンネルを (1 − R÷255) の累乗として網点面積へ写し、指数には用紙タイプごとの色域圧縮量を使います。分版は「墨版を作らない版」と「無彩色成分をすべて墨版へ振り替えた版」の 2 通りを作り、用紙タイプごとの墨版寄せ度で混ぜます。どちらも理想インキモデル R = 255 × (1−C) × (1−K) では同じ色に戻るので、黒は C0 M0 Y0 K100 の近傍になり、総インキ量(単純な合計)も 4 色ベタにはなりません。透明な画素は白い紙へ合成してから解析します。推定 dpi は画素数を「仕上がりサイズ + 塗り足し」の実寸で割って求めます。埋め込み dpi・色モード・ICC の有無は PNG と JPEG のヘッダから読み、塗り足し不足は外周の白または透明に近い画素の割合で判定します。
モノクロ原稿検査の仕組み
この検査だけは縮小したコピーではなく原寸の画素を読みます。縮小の補間は 1bit 原稿に無いグレーを作り、1 画素の線を消し、網点の周期を壊すためです。順序は階調 → 周期網点 → 網点を除いた線幅で、網点を先に見るのは網点の粒を細い線と数えないためです。階調は輝度のヒストグラムと「中間調が近黒と近白の両方に接しているか」で分けます。網点は、二値でベタでも白紙でもない小タイルの 2 次元自己相関から反復の間隔と向きを求め、隣のタイルと一致した場所だけを線数へ換算します。
精度と対象外のこと
このツールはベータ版で、ブラウザ内の簡易 CMYK 推定です。埋め込まれた ICC プロファイルは有無を読むだけで適用せず、ICC厳密変換・PDF/X検証・.clip 解析・自動補正は対象外です。
- 実際の色は印刷所の機械・用紙・インキで変わります。正確な判断は CSP の CMYK 書き出し設定と入稿先の ICC 指定でも確認してください。分版はすべての RGB を表せる理想モデルなので、色域外の警告は出しません。
- CMYK の JPEG はブラウザが RGB へ変換してから解析するため、ファイル内の分版は失われます。版の確認は書き出したソフト側で行ってください。
- 塗り足しとセーフエリアの判定は「画像の外周が塗り足し部分である」という前提に立つので、仕上がりサイズちょうどの画像では意味を持ちません。
- 網点の線数と角度は推定です。小タイルを標本に見るので狭い範囲のトーンは検出できないことがあり、等間隔のハッチングも周期として出ます。最小線幅は 45 度に近い太い線を √2 倍ほど太く見積もります。
画像・入力データの扱い
画像の読み込みも解析もすべてブラウザ内で行い、画像やレポートを外部に送信することはありません。入稿条件の設定だけが localStorage に保存され、読み込んだ画像は保存されずページを閉じると消えます。
よくある質問
判定が「入稿可」なら必ず問題なく刷れますか?
設定した入稿条件の範囲で、画素から機械的に判定できる項目に問題がなかったという意味です。色の最終判断は入稿先の指定と色校正で行ってください。
本文を全ページまとめて診断できますか?
読み込み口で複数のファイルを選ぶと、1 ページずつ解析して一覧表にまとめます。ただし画素は選択中のページだけ保持するため、入稿条件を変えて判定し直されるのもそのページだけです。他の行には「読み込み時の条件」と印が付くので、再解析ボタンを押してください。
モノクロ漫画の原稿でも使えますか?
使えます。用途プリセットの「モノクロ漫画本文」は必要解像度 600dpi・総インキ量上限 250% で、モノクロ原稿検査も既定で入ります。2 値かどうか、アンチエイリアスが残っていないか、網点が何線に見えるか、最も細い線が出力で何 mm になるかを原寸の画素から調べます。
「最小線幅」の警告はどのくらいの細さで出ますか?
出力時に 0.1mm を下回ったときです。600dpi なら約 2.4 画素で、1〜2 画素の線が該当します。印刷所が「0.1mm 未満の線は飛ぶことがある」と案内するのが一般的で、非塗工紙では特にかすれます。
CLIP STUDIO PAINT の入手について
CLIP STUDIO PAINT とはどんなソフトか
CLIP STUDIO PAINT(クリップスタジオペイント)は、株式会社セルシスのイラスト・マンガ・アニメーション制作用ペイントソフトです。汎用の画像編集ソフトとの違いは、ペン入れに向いた筆圧設定、コマ割りとフキダシ、トーン、3D 素材、パース定規といった、紙と印刷を前提にした機能が最初から入っている点です。Windows・macOS・iPad・iPhone・Android・Chromebook で動きます。
体験版と購入の選択肢
- 公式サイトで無料の体験版が配布されており、描き味と必要な機能を自分の環境で確かめてから判断できます。
- グレードは PRO と EX の 2 つで、複数ページのマンガ原稿を 1 つの作品として扱う機能が要るかどうかが主な分かれ目です。
- 買い切りの一括払いと月額・年額のプランがあります。価格・構成・対応端末は改定されることがあるため、最新の条件は公式サイトで確認してください。
このツールと CLIP STUDIO PAINT の関係
このページのツールはブラウザだけで動くので、CLIP STUDIO PAINT を持っていなくても診断と書き出しは使えます。ただし得られるのは CLIP STUDIO PAINT へ持ち込む材料で、見つかった問題を直す作業は原稿を描いた側で行うことになります。考え方は他のペイントソフトにも流用できますが、数値と書き出しは CLIP STUDIO PAINT に合わせてあります。