CSP Web Tools

同人誌の塗り足し(裁ち落とし)完全ガイド

塗り足しが必要な理由(断裁のズレ)から、3mm と 5mm の使い分け、CLIP STUDIO PAINT の[裁ち落とし幅]での設定、描き終わった原稿に後から足す手順、白フチ・文字切れといった典型的な失敗の直し方まで、公式マニュアルで確認できる項目名だけを使ってまとめました。

塗り足しは「キャンバスを大きくすること」ではなく「絵を仕上がり線の外へ伸ばすこと」です。CLIP STUDIO PAINT ではこの幅を[裁ち落とし幅]と呼びます。設定の場所と、後から足すときの手順、断裁で起きる失敗をまとめます。

公開日 ・更新日

塗り足しは断裁のズレを吸収するための余白

印刷所は、刷り上がった紙を仕上がりサイズへ断裁して本にします。断裁は紙を何枚も重ねて刃を入れる工程なので、束の上と下で切れる位置がわずかに違いますし、刃の入り方によっても位置は動きます。仕上がり線ちょうどまでしか絵が描かれていない原稿は、断裁が外側へズレた瞬間に、絵の無い白い帯がそのまま紙に残ります。塗り足し(裁ち落とし)は、このズレを吸収するために仕上がり線の外側へ絵をはみ出させておく余白です。

裏を返せば、塗り足しの部分は「刷られるが、本になったときには残らない前提の領域」です。ここに読ませたい要素を置いても意味がなく、逆に何も描かれていなければ、ズレたぶんだけ白く出ます。作業としては、キャンバスを大きくすることが目的ではなく、外周の絵をその大きくした帯まで伸ばすことが目的だと考えると、手順を間違えにくくなります。

3mm と 5mm の使い分け

CLIP STUDIO PAINT の新規作成では、この幅を[裁ち落とし幅]という項目で設定します。公式マニュアルの説明では[5mm]と[3mm]から選択でき、「塗り足し幅」という名前の項目は存在しません。印刷側の言葉とソフト側の言葉が違うだけなので、印刷所の案内に「塗り足し 3mm」と書いてあれば、CSP 側は[裁ち落とし幅]を[3mm]にすれば合います。

  • 入稿先が幅を指定しているなら、その値が最優先です。同人誌の印刷所は 3mm を基準に案内していることが多く、当サイトの入稿前チェックの用途プリセットも塗り足し 3mm を既定値にしています。
  • 指定が見つからないときは 3mm を選びます。B5 の本文なら、仕上がり 182 × 257mm に対してキャンバスは 188 × 263mm になります(四辺に 3mm ずつなので、幅と高さにはそれぞれ 6mm が足されます)。
  • 5mm は塗り足しを厚めに取りたいときの選択です。断裁の余裕が増えるぶん、仕上がり線の外に置ける絵の量も増えます。A5 の本文なら、仕上がり 148 × 210mm に対して 158 × 220mm のキャンバスです。
  • 3mm と 5mm のどちらで作っても、仕上がりサイズが同じなら本の見え方は変わりません。違うのは切り落とされる帯の幅だけです。ただし 3mm で作った原稿を 5mm 指定の入稿先へ出すと足りないので、幅を決めるのは必ず指定を読んだ後にしてください。
  • [5mm]と[3mm]以外の数値を入れたいときは、[作品の用途]で[すべてのコミック設定を表示]を選ぶと入力できるようになります。

新規作成で塗り足しを設定する

  1. [ファイル]メニューから[新規]を開き、[作品の用途]を選びます。印刷用の漫画なら[コミック]です。複数ページをまとめて扱える[同人誌入稿]は EX の機能なので、PRO では[コミック]を使います。
  2. [製本(仕上がり)サイズ]に本のサイズを入れます。公式マニュアルはこの項目を「漫画原稿の仕上がり枠と裁ち落とし幅を設定できます。仕上がり枠とは、印刷したときに表示される範囲です」と説明しています。ここに入れるのは本の寸法で、塗り足しを足した寸法ではありません。
  3. [裁ち落とし幅]で[3mm]か[5mm]を選びます。この幅が四辺に足された寸法がキャンバスになるので、[用紙サイズ]を自分で計算して入れる必要はありません。
  4. [基本枠(内枠)]でコマを置く範囲を決めます。設定方法は[マージン指定]と[サイズ指定]から選べます。断裁で切れてはいけない要素は、この内枠を目安に配置します。
  5. [解像度]と[基本表現色]を入稿先の指定に合わせます。[基本表現色]は[カラー]・[グレー]・[モノクロ]から選ぶ項目で、モノクロ 2 値の本文なら 600dpi、カラーなら 350dpi が目安です。

作成したら、[表示]メニューの[トンボ・基本枠]で仕上がり位置と内枠の線を画面に出しておきます。同じメニューの[トンボ・基本枠の設定]から後で寸法を変えられますし、[セーフライン]も同じメニューにあります。線が見えていれば、「どこまで伸ばせば塗り足しになるか」を毎回考えずに済みます。

描き終わってから塗り足しを足す

仕上がりサイズちょうどで作ってしまった原稿にも、後から塗り足しを足せます。使うのは[編集]メニューの[キャンバスサイズを変更]です。ダイアログには[幅][高さ][単位][基準点][中心を固定]があり、[基準点]を中央にすれば四辺へ均等に広がります。

  1. [単位]を mm にして、[幅]に仕上がり幅 + 6mm、[高さ]に仕上がり高さ + 6mm を入れます(3mm の塗り足しの場合)。B5 なら 188mm × 263mm です。600dpi なら、およそ 4441 × 6213 ピクセルになります。
  2. [基準点]を中央にして、既に描いてある絵の位置が動かないようにします。ここを左上などにすると、絵が片側へ寄ったまま余白が付きます。
  3. 広がった外周は透明のままなので、背景・ベタ・トーンをその帯まで伸ばします。ここを飛ばすと、キャンバスだけ大きくて絵が届いていない状態になり、断裁のズレがそのまま白い帯になります。
  4. [表示]メニューの[トンボ・基本枠の設定]で仕上がり枠を新しい寸法に合わせ、断裁位置を画面で確認できるようにします。

やってはいけないのは、[編集]メニューの[画像解像度を変更]で原稿全体を拡大して塗り足しを作る方法です。キャンバスの見た目の寸法は合いますが、仕上がり枠に対する絵の大きさが変わるので、内枠に収めたコマもセリフも全体が外側へ寄ります。600dpi で描いた線を拡大すれば、線が持っている実効的な解像度も落ちます。足りないのは絵の大きさではなく外周の絵なので、広げるのはキャンバスだけにしてください。

塗り足しに絵を伸ばす描き方

  • 背景のベタ・グラデーション・トーンは、そのレイヤーのままキャンバスの端まで伸ばします。塗り足しの帯だけを別レイヤーで継ぎ足すと、断裁位置によっては継ぎ目の線が紙に出ます。
  • 集中線や効果線は仕上がり線で止めず、キャンバスの外周まで抜けさせます。仕上がり線の手前で終わっていると、断裁が外へズレたときに線の切れ端が見えます。
  • 仕上がり線に接するコマ(裁ち落としのコマ)は、そのコマの中身だけを塗り足しの帯まで伸ばします。コマ枠の線を伸ばすのではなく、枠の外側まで絵で埋めるのが目的です。
  • 紙の色を残したい部分は「塗らない」ではなく「白で塗る」と決めておくと、透明のまま書き出してしまう事故を防げます。透明は印刷では紙の白になりますが、書き出し形式や合成の設定によって扱いが変わるため、白で確定させたほうが安全です。
  • 見開きで絵をつなげる場合、ノド側は断裁されませんが、綴じ方によって見えなくなる幅が変わります。中央に読ませたい要素を置かないという判断は、塗り足しとは別に必要です。

よくある失敗

塗り足しを作ったのに、刷り上がりの端に白いフチが出たのはなぜですか?

キャンバスは広げたものの、絵をその幅まで伸ばしていない場合に起こります。書き出した画像を等倍で開き、四辺すべてで絵が画像の端に接しているかを確認してください。角の 4 か所だけが空いている、下辺だけ数ピクセル空いている、という抜け方が多いので、辺の中央ではなく角を見るのが確実です。

断裁で文字が切れました。どこまで内側に入れれば安全ですか?

塗り足しは断裁が外へズレたときの対策で、文字が切れるのは内へズレたときの話なので、対策も別です。仕上がり線から内側にも同じだけの余裕(セーフマージン)を取り、文字・ロゴ・ノンブル・QR コードはその内側へ入れます。CSP では[基本枠(内枠)]と、[表示]メニューの[セーフライン]が目安になります。

表紙にも塗り足しは必要ですか?

必要です。表紙は表 1・背・表 4 が 1 枚につながった 1 点の原稿になるので、外周の四辺すべてに塗り足しが要ります。背幅は本文の用紙とページ数で決まる値なので、印刷所が出した背幅で原稿の寸法を確定させてから、その外側に塗り足しを足す順番になります。

EX で書き出すと塗り足しが消えてしまうことがあるのはなぜですか?

書き出し設定の[出力範囲]は EX の項目で、[ページ全体]・[トンボの裁ち落としまで]・[トンボの内側まで]・[選択範囲]から選びます。[トンボの内側まで]を選ぶと仕上がり位置で切られた画像になるので、塗り足しは残りません。塗り足し込みで入稿するなら[トンボの裁ち落としまで]か[ページ全体]を選んでください。

書き出した画像で最後に確かめる

設定を合わせたつもりでも、印刷所に届くのは書き出した画像そのものです。入稿前チェックツールに書き出した PNG や JPEG を読み込むと、入力した仕上がりサイズ・塗り足し・必要解像度と突き合わせて、外周に白や透明に近い画素がどれだけ残っているかを割合で出します。割合が大きければ塗り足し不足の可能性として警告に並び、どの辺が空いているかはヒートマップで場所として確認できます。

同時に、画素数を「仕上がりサイズ + 塗り足し」の実寸で割った推定 dpi も出るので、塗り足しぶんを足し忘れたまま書き出したせいで解像度が足りない、という組み合わせの事故もその場で見つかります。ファイルに埋め込まれた dpi と食い違っている場合も別の警告になります。画像はブラウザの中だけで処理され、サーバーへは送信されません。