写真を参考に3D素材を置いたのに、遠近感が合わないことはありませんか。写真のレンズ情報からクリスタの[パース]に入れる数値を求め、3Dカメラを調整する手順を説明します。
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焦点距離と画角の関係 — 広角 24mm から望遠 135mm まで
同じセンサー・カメラ位置・向きなら、焦点距離を変えると写る範囲と像の大きさが変わり、近景と遠景の相対的な大きさは変わりません。広角で近寄り、望遠で離れて同じ大きさに被写体を収めると、撮影位置が変わるため遠近感も変わります。写真資料に3Dを合わせるには、画角だけでなくカメラ位置・向き、センサー寸法、縦横比とトリミング条件を合わせます。換算値だけで構図全体が一致するわけではありません。
- 24mm(広角): 水平画角は約 74 度。近距離のものが大きく強調され、部屋の隅や見上げ・見下ろしの構図で遠近感が誇張されます。周辺ほど形が伸びて見えるのも広角の特徴です。
- 35mm(準広角): 水平画角は約 54 度。24mm より歪みは穏やかで、環境ごと人物を写す「環境ポートレート」や、街並みの背景でよく使われます。
- 50mm(標準): 水平画角は約 40 度。人の目で見た遠近感に近いとされ、誇張の少ない自然な構図になります。基準として最初に当たりを付けるのに向きます。
- 85mm(中望遠): 水平画角は約 24 度。背景が圧縮されて人物が背景から浮き上がり、顔まわりのパースがほぼ付かないため、人物の描写でよく選ばれます。
- 135mm(望遠): 水平画角は約 15 度。奥行きがかなり平坦に潰れ、遠くの背景要素を大きく引き寄せます。顔だけを切り取るような構図や、遠景の圧縮効果を狙うときに使います。
CSP のパース値と焦点距離の対応
カメラの画角は「FOV = 2 × atan(センサー寸法 ÷ (2 × 焦点距離))」で決まります。CLIP STUDIO PAINT の 3D レイヤーに入力するパース値が紐づいているのは、このうち垂直画角(キャンバスの高さ方向の画角)で、「パース値 = 17.636 × tan(垂直画角 ÷ 2)」で求められます。係数 17.636 も、基準が垂直画角であることも、CLIP STUDIO PAINT 5.0.4 の実機を測って確かめた事実です。
垂直画角はキャンバスの縦横比によって変わるので、同じレンズでもキャンバスが違えばパース値は違います。ツールの基準センサー幅を初期状態のフルサイズ相当 36mm のままにしておくと、式は「パース値 = 317.4 × キャンバス高さ ÷ (キャンバス幅 × 焦点距離(mm))」に簡約でき(近似ではなく厳密な簡約です)、よく使う縦横比では次の関係になります。左が 16:9(1920×1080 など)、右が正方形の場合です。
- 16:9 なら パース値 = 178.6 ÷ 焦点距離(mm)、正方形なら 317.4 ÷ 焦点距離(mm)
- 24mm → 16:9 で約 7.44、正方形で約 13.23
- 35mm → 約 5.10、約 9.07
- 50mm → 約 3.57、約 6.35
- 85mm → 約 2.10、約 3.73
- 135mm → 約 1.32、約 2.35
この対応はセンサー幅が 36mm のときだけ成り立ちます。撮影に使ったカメラが APS-C やマイクロフォーサーズなど小さいセンサーの場合、同じ焦点距離でも実際の画角はフルサイズより狭くなるため、Exif の焦点距離をそのまま入れると画角がずれます。撮影機材のセンサーサイズが分かっているならセンサープリセットをそのカメラに合わせ、分からなければ 35mm 換算焦点距離をフルサイズ基準のまま入力してください。
この換算式は CELSYS の公式式ではありません。公式マニュアルは「パースは値が大きいほど画角が広い」と説明するだけで換算式を示していないため、実機を測って求めました。校正用の立方体を 3D レイヤーとして読み込み、パースを 5・8・12・20 に設定して書き出した画像から、消失点をたどって実際の画角を測っています。1600×1600px の正方形キャンバスで係数 17.636 が決まり(4 点でのばらつきは 0.02%)、2400×1350 と 1350×2400 でも測り直したところ、3 形状とも垂直画角が 97.17〜97.18 度で一致したため、基準の軸も確定しました。
この対応は以前、「10 × 水平画角のタンジェント」つまりおおよそ「180 ÷ 焦点距離」として紹介されることが多く、このサイトもそれに従っていました。旧式が上の式と一致するのは横縦比 1.764 のキャンバスのときだけで、これは 16:9(1.778)とほぼ同じです。つまり旧式は係数がずれていたというより軸を取り違えていて、16:9 前後のキャンバスでだけ偶然ほぼ正しかったことになります。上の一覧で 16:9 側の数値が旧来の値に近いのはこのためで、正方形や縦長のキャンバスでは大きく外れていました。
3D デッサン人形・背景素材への適用手順
求めたパース推定値を CLIP STUDIO PAINT 側に反映する手順です。公式マニュアルの構成に沿っています。
- [素材]パレットから、配置したい 3D デッサン人形や背景素材を選び、キャンバスへドラッグ&ドロップします。読み込みと同時に 3D レイヤーが新規作成されます。
- [オブジェクト]ツールで、そのレイヤー内の 3D 素材(または空間そのもの)を選択します。
- [ツールプロパティ]パレット、または下部の詳細アイコンから開く[ツール詳細]パレット(Ver.5.0 で[サブツール詳細]から改称)で「カメラ」カテゴリを開きます。
- [投影方法]が[透視投影]になっていることを確認します。[平行投影]を選んでいると[パース]の項目自体が操作できなくなるため、画角を再現したい場合は必ず[透視投影]側にしておきます。
- [パース]の欄に、このツールで得た「CSP 3Dカメラ パース推定値」を入力します。
![[ツール詳細]パレット。左のカテゴリ一覧は[操作][マウス・ジェスチャー][オブジェクトリスト][配置]に続いて[カメラ1]が選択され、[カメラ2][レンズ][オブジェクト][光源][フォグ][天球][環境]と続く。右側には[使用中のカメラ]、[アングル]、[投影方法]の[透視投影]と[平行投影]の切り替え([透視投影]が選択)、[パース]20.00、グレーアウトした[平行投影のスケール]、[ロール]0、[カメラ位置]の X・Y・Z が縦に並んでいる。](/articles/camera-category-ja.png)
図の[パース]には 20.00 が入っています。ここを、このツールで求めた値(16:9 のキャンバスで 50mm 相当なら 3.57)に書き換えるのが手順 5 です。[透視投影]が選ばれているので、その下の[平行投影のスケール]はグレーアウトして操作できません。
カメラの位置を変えると、近景と遠景の相対的な大きさや遮蔽が変わります。焦点距離に対応するパース値は画角、カメラの移動・回転は視点と向きを調整する項目です。まず画角を合わせ、次に位置と向きを合わせて比較します。
キャンバスサイズを決めてから 3D レイヤーを作ってください。3D レイヤーは作成した時点の投影を保持するので、あとからキャンバスサイズを変えても 3D の見え方は計算し直されません(実機で確認しています)。キャンバスの縦横比を変えたのに絵の広がりが変わらないときは、3D レイヤーを作り直したうえで、新しい縦横比で求めたパース値を入れ直す必要があります。
レンズ選びの目安
焦点距離が分からない資料でも、描きたい対象と構図の傾向から当たりを付けられます。
- 人物(バストアップ〜全身): 50〜85mm
- 顔まわりに強いパースが付きにくく、実際の見た目に近い比率で描けます。中望遠寄りの 85mm は背景を圧縮してキャラクターを浮き立たせたいときに、標準寄りの 50mm は動きのある構図で身体の比率を崩したくないときに向きます。
- 背景・環境: 24〜35mm
- 部屋の奥行きや街並みの広がりを画面に収めやすく、パースの誇張も背景の説得力として働きます。人物を背景ごと写す環境カットでも、この範囲を選ぶと空間の広さが出ます。
- 判断に迷うとき: 50mm を基準にする
- 標準域は誇張が少ないぶん、パースの強さで絵の印象が崩れにくく、最初の当たりとして安全です。資料写真の雰囲気(広角らしい歪みがあるか、望遠らしい圧縮があるか)と見比べながら、24mm 側か 85mm 側かを判断していきます。
写真の Exif に焦点距離が残っている場合は、その数値とセンサーサイズをこのツールに入力すれば、目安に頼らずそのままパース値を求められます。手描きのパース定規と 3D 素材の見え方を揃えたいときも、まずレンズの当たりを付けてからパース値を微調整すると、資料合わせの手戻りが少なくなります。
出典と確認条件
資料確認日: 2026-09-06。既存の掲載画面はCSP 5.0.4で、項目名はバージョンにより異なる場合があります。