線数・濃度・角度を決めたトーンを、モニタ上で紙と同じ実寸に描いて確かめます。数値だけでは分からない「刷ったときにこの網点がどう見えるか」を、画面で先に見るためのツールです。
基本
このツールでできること
用紙サイズ・印刷解像度・線数・濃度・角度・網点形状を指定すると、その条件のトーンが等倍で描かれます。網点間隔と網点径は mm と px の両方で表示され、実際に描かれた画素から測った被覆率も出ます。テストパターンは平網・グラデーション・重ね貼り・線画境界の 4 種類があり、それぞれ別のことを確かめるためのものです。原稿より小さいサイズで掲載するときの実効線数(縮小印刷の換算)も計算できます。
作画のどの工程で使うか
- トーンを重ね貼りしたときにモアレが出るかどうかを、角度差を振って確認する
- どの濃度で網点が飛ぶ・潰れるか、細い線がトーンに埋もれないかをテストパターンで見る
使い方
- 入力パネル下部の等倍キャリブレーションで、画面上の帯を実物の定規で 100mm に合わせて保存します。これをしないと実寸が概算になります。
- 用紙と向き、印刷解像度を、実際の原稿に合わせて設定します。
- 線数・濃度・角度・網点形状を入力します。
- テストパターンを切り替えて、確かめたいこと(平網・グラデーション・重ね貼り・線画境界)に合ったものを選びます。
- プレビューを実際に紙を見る距離で確認し、下の数値で網点間隔・網点径・実測被覆率を読み取ります。
入力項目の意味
- 印刷解像度
- 原稿の dpi です。網点間隔が原稿上で何 px になるかを決めます。モノクロ原稿では 600dpi がよく使われます。
- 線数(lpi)
- 1 インチあたりに並ぶ網点の数です。大きいほど網点が細かくなります。同人誌のモノクロ本文では 55〜70 線あたりがよく使われます。
- 濃度
- 網点が紙を覆う割合(%)です。50% を超えると、黒い点を打つ側から白を抜く側へ極性が反転します。反転している間は、表示も網点径ではなく白抜き径になります。
- 角度
- 網点格子の傾きです。45 度は網点が最も目立ちにくい向きで、重ね貼りをしないなら既定のままで構いません。
- テストパターン
- 平網は全面同じ濃度、グラデーションは左端 0% から右端 100% への掃引、重ね貼りは 2 版を角度差をつけて重ねたもの、線画境界は太さの違う線とベタの境目にトーンを掛けたものです。
- 重ね角度
- 重ね貼りのときだけ現れる、第 2 版との角度差です。0 度なら単版と完全に一致するので、比較の基準として使えます。
- 等倍キャリブレーション
- 画面上の 100mm を実物の 100mm に合わせる設定です。保存した値は画面定規ツールとも共有されます。
- 縮小印刷の換算
- 原稿サイズと掲載サイズを選ぶと、貼ったトーンの線数が縮小後どれだけ細かくなるか(実効線数)を計算します。プレビューの見た目には影響しません。
結果の読み方と CLIP STUDIO PAINT への持ち込み方
数値の読み方
- 網点間隔は mm と原稿上の px の両方で出ます。px の値が小さいほど、原稿の解像度に対して網点が細かすぎるということです。
- 実測被覆率は、描いた画素のうちインクが乗った割合です。設定濃度から大きく離れているときは、線数に対して画面の実寸が粗すぎる可能性があります。
- モアレ周期は、重ね貼りのときに現れるうねりの間隔です。値が大きいほど、うねりが大きく目立つ模様として見えます。
CLIP STUDIO PAINT でトーンを作る 3 つの方法
- 素材パレットのトーン素材を貼る場合は、[素材]パレットの単色パターンにあるトーン素材をキャンバスへドラッグ&ドロップします。貼り付けた後にレイヤーを選択し、[レイヤープロパティ]パレットで線数・濃度・角度・網の設定(網点形状)を確認し、ここで決めた数値に変更します。
- [レイヤー]メニュー→[新規レイヤー]→[トーン]を選ぶと簡易トーン設定ダイアログが開きます。線数・濃度・種類(円・四角・菱形などの網点形状)・角度を入力して[OK]を押すと、その設定のトーンレイヤーが作成されます。
- 既に塗りつぶしたレイヤーをトーン化する場合は、レイヤーを選択して[レイヤープロパティ]パレットでトーン効果をオンにします。同じく線数・濃度・網の設定・角度をその場で設定でき、作成後もいつでも変更できます。
![[簡易トーン設定]ダイアログ。左に[線数]60.0、[濃度]40%、[種類]の[円]、[角度]45 の入力欄が縦に並び、その下の[サイズ]と[係数]はグレーアウトしている。右に網点パターンのプレビュー、右上に[OK]と[キャンセル]、最下部に「同じ設定のトーンがあるときはこの一つにまとめる」のチェックボックスがある。](/articles/new-tone-layer-ja.png)
![[レイヤープロパティ]パレット。[効果]のアイコン列で網点のアイコンが選択され、その下に[トーン線数]60.0、[濃度]の[画像の色を使用]、チェックの入った[レイヤーの不透明度を反映]、チェックの入っていない[階調化]、[網の設定]の[円]、そこから展開した[角度]45 が並んでいる。](/articles/layer-property-tone-ja.png)
線数の選び方と実効線数の反映
同人誌のモノクロ本文では 60 線が標準的で、網点がはっきり見えても違和感が少なく印刷も安定します。原稿を縮小して掲載する場合や、繊細な階調を見せたい場合は 85 線程度まで上げて網点を目立ちにくくしますが、線数を上げるほど印刷解像度に対して網点間隔が細かくなり、潰れやモアレのリスクも上がるため、網点間隔の px 表示で解像度が足りているか確認してから使います。ここで求めた実効線数は掲載後の見た目の目安なので、CLIP STUDIO PAINT のトーン設定に入力する線数は、掲載サイズではなく原稿(作業キャンバス)のサイズを基準にします。たとえば B4 原稿を B5 に縮小して掲載し、実効線数を 60 線程度に収めたいなら、原稿側のトーン設定はおよそ 42〜43 線が目安です。
仕組みと制約
計算の根拠
網点間隔は 25.4 ÷ 線数(mm)で、原稿上の px 換算は 印刷解像度 ÷ 線数 です。網点径は、セル面積に対する被覆率から面積が一致する半径を求めたもので、円なら 半径 = 間隔 × √(被覆率÷π)、四角なら 間隔 × √被覆率 ÷ 2、菱形なら 間隔 × √(被覆率÷2) を使います。濃度が 50% を超えた側では極性を反転し、1 − 濃度 の面積で白を抜きます。モアレ周期は、同じ線数の 2 版を角度差 θ で重ねたときの空間周波数の差から 網点間隔 ÷ (2 × sin(θ÷2)) で求めます。網点格子は正方なので、θ は 0〜90 度へ畳んだうえで小さい側を採ります。画面換算は既定で CSS の 96dpi を基準にし、キャリブレーションを保存するとその値に置き換わります。プレビューは canvas をモニタの実画素密度(devicePixelRatio)の倍率で描き、CSS 上の寸法だけを実寸に合わせています。60 線の網点間隔は等倍で約 1.6 CSS px しかなく、CSS px を 1 画素として描くと網点の形そのものが表現できないためです。等倍で描く画素数の上限も CSS px ではなく実画素で数えるので、画素密度の高いモニタでは切り出しが起きやすくなります。実効線数は、線数を縮小率(掲載幅 ÷ 原稿幅)で割って求めます。B4(257mm)原稿を B5(182mm)で掲載すると、60線は約 84.7線 相当になります。
精度と対象外のこと
実寸表示の正しさは、等倍キャリブレーションを合わせたかどうかで決まります。未補正のときは CSS の 96dpi を仮定した概算表示で、実際のモニタの画素密度とは一致しません。ブラウザやOSの表示倍率を変えると、保存した補正値もずれます。
- 画面の実画素で描いていても、網点格子と画素格子の干渉そのものは消えません。実際の紙には無い細かな揺らぎ(偽のモアレ)が見えることがあり、ブラウザの表示倍率やモニタを変えると見え方も変わります。モアレの判断はモアレ周期の数値と併せて行ってください。
- 線画境界のパターンでは、画面の実画素 1px を下回る細さも 1px で描くため、最も細い数本は実際の刷り上がりより太く見えます。
- 重ね貼りは 2 版までです。3 版以上の重なりや、CSP のトーン削り・グラデーショントーンは扱いません。
- 印刷所が実際に使うスクリーニング(FM スクリーンなど)や、出力機の再現特性は再現しません。手持ちの画像そのものを入稿条件で確かめたい場合は、印刷プリフライトを使ってください。
入力データの扱い
トーンの描画も被覆率の計測もすべてブラウザ内で行い、入力した数値を外部に送信することはありません。トーンの設定と画面キャリブレーションの値はブラウザの localStorage に保存され、次に開いたときに復元されます。補正は画面上の「補正を解除」でいつでも消せます。
よくある質問
キャリブレーションは必ず必要ですか?
実寸として見るなら必要です。未補正でも表示はされますが、CSS の 96dpi を仮定した概算になるため、モニタによっては 2 割前後ずれます。
濃度を 70% にしたら網点径が小さくなりました。
50% を超えると白を抜く側へ極性が反転するため、表示も「白抜き径」に切り替わります。濃くなるほど抜きが小さくなるので、値としては正しい挙動です。
モアレが出ない角度差はどれですか?
角度差 0 度なら 2 版が完全に重なるので、単版と同じ見え方になります。それ以外の角度では必ずうねりが生じ、周期はモアレ周期の欄で確認できます。
用紙全面が表示されないのはなぜですか?
等倍で描く画素数が上限を超えると、紙面中央を切り出して表示します。縮小すると網点が滲んで等倍評価が成り立たないためです。数えているのはモニタの実画素なので、画素密度の高いモニタほど切り出される範囲が広くなります。結果の「画面換算」欄に、実画素比と実際に描いている画素数が出ます。
プレビューに、設定していないはずの細かい模様が見えます。
網点格子と画面の画素格子が干渉して出る偽のモアレです。canvas はモニタの実画素密度で描いていますが、干渉そのものは画面で見るかぎり避けられません。ブラウザの表示倍率を変えると見え方が変わるものは、この偽のモアレです。重ね貼りのモアレはモアレ周期の数値で確認してください。
実効線数が100線を超えるとどうなりますか?
モアレや潰れのリスクが大きく上がります。線数を下げるか、原稿の解像度を上げてから縮小印刷することを検討してください。
CLIP STUDIO PAINT の入手について
CLIP STUDIO PAINT とはどんなソフトか
CLIP STUDIO PAINT(クリップスタジオペイント)は、株式会社セルシスが開発しているイラスト・マンガ・アニメーション制作用のペイントソフトです。汎用の画像編集ソフトとの違いは、ペン入れに向いた筆圧設定、コマ割りとフキダシ、トーン、3D 素材、パース定規といった、紙と印刷を前提にした制作機能が最初から入っている点にあります。Windows・macOS・iPad・iPhone・Android・Chromebook で動きます。
体験版と購入の選択肢
- 公式サイトで無料の体験版が配布されています。描き味と必要な機能を自分の環境で確かめてから判断できます。
- グレードは PRO と EX の 2 つで、複数ページのマンガ原稿を 1 つの作品としてまとめて扱う機能が要るかどうかが主な分かれ目です。
- 買い方は買い切りの一括払いと、月額・年額のプランがあります。使える端末の種類と台数はプランによって変わります。
- 価格・プランの構成・対応端末は改定されることがあるため、最新の条件は公式サイトで確認してください。
このツールと CLIP STUDIO PAINT の関係
このページのツールはブラウザだけで動くので、CLIP STUDIO PAINT を持っていなくても計算や書き出しはそのまま使えます。ただしここで得られるのは CLIP STUDIO PAINT へ持ち込むための材料で、ここで決めた線数・濃度・角度は、CLIP STUDIO PAINT のトーンレイヤーに入力して初めて原稿に載ります。考え方の部分は他のペイントソフトにも流用できますが、数値と書き出しは CLIP STUDIO PAINT に合わせて作ってあります。