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トーンのモアレはなぜ起きるか — 角度・線数・縮小の3つの原因

トーンを重ねたときに突然現れる縞模様やロゼット状のうねりの正体と、重ね貼りの角度差・線数の混在・縮小印刷という3つの原因を、数値とあわせて解説します。トーン線数プレビューの重ね貼りモードで事前に確かめる手順もまとめました。

トーンを重ねたはずなのに、原稿のどこにも設定していない縞模様やうねりが紙の上に浮き出ることがあります。これがモアレで、角度・線数・縮小という3つの条件がそろったときに起きます。原因ごとに数値で確かめ、CLIP STUDIO PAINTで予防する手順をまとめます。

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モアレの正体 — 周期パターンの干渉

トーンの網点は、一定の間隔で規則正しく並んだ格子です。この規則的な格子が、別の規則的な格子と重なると、間隔のわずかなズレが「うなり」として増幅され、どちらの原稿にも実際には無かった新しい模様が浮かび上がります。これがモアレです。網点1個より遥かに粗い間隔の縞や、渦を巻くようなロゼット状の模様として現れるため、細部を直しても消えず、原因を特定しないまま線数や濃度を変えても再現性のない対症療法になりがちです。

モアレの原因はいつも「2つの周期パターンが重なっている」ことに集約されます。角度がずれた2枚のトーン、線数が違う2枚のトーン、そして原稿のトーン格子と印刷・縮小の側が持つ別の格子です。以下、この3つを順に見ていきます。

原因1: 重ね貼りの角度差

同じ線数の2枚のトーンを角度差 θ で重ねると、モアレの周期は 網点間隔 ÷ (2 × sin(θ ÷ 2)) になります。この式が示す性質はひとつで、θ が 0度(完全に重なる)や90度(網点格子は正方なので90度回すと元に戻り、実質0度と同じ)に近づくほど、周期は際限なく大きくなります。周期が大きいということは、うねりが紙の広い範囲にわたる大きな波として目に付きやすいということです。

  • 60線のトーンで角度差 5度: 周期は約4.85mmで、ページの中でうねりがはっきり視認できます。
  • 同じく角度差 10度: 周期は約2.43mmまで縮みますが、まだ目立つ大きさです。
  • 角度差 15度: 周期は約1.62mmです。トーン線数プレビューの重ね貼りモードは、この角度差をあえて既定値にしています。モアレが出る側の代表例として確かめやすいためです。
  • 角度差 30度、または60度: 周期は約0.82mmまで縮みます。網点格子は90度で一周するため、60度差は90−60=30度差と同じ扱いになり、同じ周期になります。
  • 角度差 45度: 周期は約0.55mmで、この式の範囲では最も細かく、目立ちにくい周期になります。

「30度・60度が安全、それ以外が危険」という定石は、この計算で説明できます。角度差が0度や90度に近い数度〜十数度の範囲では周期が急激に膨らみ、誰の目にも分かる大きなうねりになります。30度・60度はこの危険域から十分離れていて、しかも90度の折り返しにより同じ結果になるため覚えやすく、周期も網点間隔の2倍程度に収まって粗い波になりにくい、という現実的な妥協点です。数式の上では45度がさらに細かい周期になりますが、実務では版ズレの許容誤差や覚えやすさも含めて30度刻みが定着しています。逆に言えば、5〜15度あたりの「ずれているようで、ずれきっていない」角度が最も危険な範囲です。

原因2: 線数の混在

角度をそろえても、線数(網点の間隔)が違う2枚のトーンを重ねると、やはりモアレが生じます。周期の違う2つの格子は、間隔が一致する場所と食い違う場所を交互に繰り返し、その繰り返しの間隔がそのままうなりの周期になります。目安として、周期の差はおおよそ 1 ÷ |1/P1 − 1/P2|(P1・P2は各トーンの網点間隔)で見積もれます。60線(間隔約0.42mm)と、わずか5線しか違わない65線(間隔約0.39mm)を重ねただけでも、うなりの周期は約5.1mmに達し、角度を完全に一致させても防げません。

トーン線数プレビューの重ね貼りモードが線数を1つしか持たず、角度差だけを振れる仕様になっているのは、このためです。線数を変える組み合わせは「安全な差」を選んで避けられる角度差とは違い、原則として避けるべき状態そのものだからです。素材パレットから拾ってきたトーン素材や、以前の原稿からコピーしたレイヤーは、線数が現在の作業と揃っていないことがあります。重ねる前に必ず[レイヤープロパティ]パレットで線数を確認してください。

原因3: 縮小印刷とグレースケール原稿の網化

縮小して掲載すると、貼ったトーンの実効線数(紙の上で数え直した線数)が変わります。実効線数は 線数 ÷ 縮小率 で、B4(257mm)原稿をB5(182mm)で掲載する場合、縮小率は約0.708なので、60線は約84.7線相当になります(詳しい導出はトーン線数と縮小印刷の実効線数の求め方の記事を参照してください)。網点間隔が詰まるということは、原稿を描いた時点では気付かなかった別の周期パターンと新たに干渉する可能性が生まれるということでもあります。

もう1つ見落としやすいのが、グレースケールのまま残した部分です。モノクロ原稿でトーン化せずグレースケールのまま入稿すると、多くの印刷所は製版の工程でそのグレー部分に自動的に網点(印刷所側の周期パターン)をかけて出力します。同じページの中に、自分で角度と線数を決めて貼ったトーンと、印刷所側が自動でかけた別の網点が両方存在すると、原因1・2とまったく同じ「2つの周期パターンの重なり」が起き、原稿を画面で見ている間は分からなかったモアレが刷り上がりで初めて現れます。印刷風加工ツールで書き出した画像を入稿データに使ってはいけない理由も同じで、すでに網点が入った画像を入稿すると、印刷所側の製版でかかる網点と二重になります。

CLIP STUDIO PAINTでの予防

  1. 原稿の全ページで、トーンレイヤーを選択し[レイヤープロパティ]パレットの線数・角度を確認します。特別な理由がない限り、線数は原稿全体で1つに統一します(同人誌のモノクロ本文なら60線前後が目安です)。
  2. 意図して2枚のトーンを重ねる場合だけ、角度差をつけます。基本は30度か45度を選び、5〜15度のような小さな差は避けます。
  3. グレースケールのまま残っている部分がないか確認し、2値化するか、[レイヤープロパティ]でトーン効果をオンにして自分でトーン化してから入稿します。
  4. 原稿を縮小して掲載する場合は、縮小後の実効線数を確認し、100線を超えていないかを見ます。100線を超えるとモアレ・潰れのリスクが大きく上がります。

トーン線数プレビューの重ね貼りモードで事前確認する

実際に紙へ刷る前に、画面上でモアレの出やすさを確かめられます。トーン線数プレビューのテストパターンには、2版を角度差をつけて重ねた「重ね貼り」があり、モアレ周期の数値も一緒に表示されます。

  1. テストパターンを「重ね貼り」に切り替えます。
  2. 線数・濃度を、実際に使う予定の値に合わせます。
  3. 重ね角度を0度から90度まで振りながら、プレビューの見た目とモアレ周期の数値がどう変わるかを確認します。既定値の15度は、あえてモアレが目立つ側の例です。
  4. 周期が大きく、うねりがはっきり見える角度を避け、30度・45度・60度あたりの周期が小さい角度を選びます。
  5. 決めた角度を、CLIP STUDIO PAINTのトーンレイヤーの[レイヤープロパティ]パレットに入力します。

ただしこのプレビューは、あくまで角度差だけを振れる仕様です。線数を変えたときの干渉や、印刷所側の自動網点との干渉は、原因2・3で説明したとおり別の理由で起きるため、線数の統一とグレースケールの網化はプレビューとは別に、原稿の側でチェックしてください。