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モノクロ原稿は2値かグレスケか — アンチエイリアスの事故を防ぐ

2 値(モノクロ 2 階調)とグレースケールの違い、アンチエイリアスが混ざったまま入稿するとトーン化や閾値処理で何が起きるか、CLIP STUDIO PAINT の[表現色]・[色の閾値]・[アンチエイリアス]での確認と直し方を、公式マニュアルで確認できる項目名だけを使ってまとめました。

モノクロ原稿の事故のほとんどは、「2 値のつもりだったが灰色が混ざっていた」という 1 点から始まります。2 値とグレースケールの違い、アンチエイリアスが混ざると何が起きるか、CLIP STUDIO PAINT のどこを見れば分かるかを順に整理します。

公開日 ・更新日

2 値とグレースケールは何が違うか

2 値(モノクロ 2 階調)は、画素が黒か白のどちらかしか持てない原稿です。灰色という状態が存在しないので、濃さを表したいときは網点(トーン)や線の密度で表します。グレースケールは、黒から白まで 256 段階の中間調を画素そのものが持てる原稿です。CLIP STUDIO PAINT の書き出し設定でも、[グレースケール]は「出力時に、黒から白の256段階に変換します」と説明されています。

印刷の側から見ると、この違いは「網点を誰が作るか」の違いです。2 値原稿は、原稿の時点で網点まで確定しています。印刷所はその黒白をそのまま版にするので、描いた人が見た画面と刷り上がりのズレが小さくなります。グレースケール原稿は中間調が残っているので、網点への変換は印刷所側の処理で行われます。どちらが正しいという話ではなく、どちらで作るかを先に決めて、原稿全体をそれに揃えることが重要です。

入稿先の指定を先に読む

  • 「モノクロ 2 階調・600dpi」と書かれていれば、原稿の時点で 2 値にします。グレーで塗った面はトーンとして網点化しておく必要があります。
  • 「グレースケール・350dpi」のように書かれていれば、中間調を残したまま入稿できます。この場合はアンチエイリアスも問題になりません。
  • 2 値のほうが指定される解像度が高いのは、1 画素で階調を表せないぶん、線の太さや網点の形をすべて画素数で描き分ける必要があるからです。
  • 同じ本の中で 2 値のページとグレースケールのページが混ざると、ページによって印刷所側の処理が変わり、濃さの出方が揃わなくなります。本文の中では揃えてください。

アンチエイリアスが混ざると何が起きるか

アンチエイリアスは、公式マニュアルの言葉では「線や境界線などに」設定するもので、「アンチエイリアスがある線は、線のギザギザが目立たなくなり、滑らかな輪郭の線を描画できます」と説明されています。画面上は確実にきれいになりますが、実際にやっているのは線の縁に中間の濃さの画素を置くことです。つまり、2 値の原稿には本来存在できない灰色を作ります。

  • 2 値指定の入稿に灰色が混ざっていると、印刷所側かソフト側のどこかで必ず 2 値化されます。どこで、どのしきい値で 2 値化されるかは原稿を作った人の手を離れるので、線の太さや細部の残り方が意図と変わります。
  • 書き出しで[モノクロ2階調(トーン化)]を選ぶと、公式の説明どおり「キャンバスの[基本線数]でトーン化」されます。線の縁の灰色も網点に置き換わるため、細い線の縁が網点の粒に崩れ、線が波打って見えます。
  • 貼ったトーンの網点と、アンチエイリアスの縁から新しく生まれた網点は、周期も角度も揃っていません。この 2 つが干渉するとモアレになります。原稿の画面では滑らかだった部分ほど目立ちます。
  • [モノクロ2階調(閾値)]は「キャンバスの輝度50%を閾値にし、2値化した状態に変換します」なので、灰色は 50% を境に黒か白へ振り分けられます。薄いグレーで塗ったつもりの面が丸ごと白へ飛ぶ、濃いめのグレーが真っ黒のベタになる、という転び方をします。
  • 灰色は線画だけでなく、消しゴムの縁・選択範囲の境界・変形やリサイズの補間からも生まれます。ペンの設定を切っただけでは足りないのは、このためです。

CSP で今の状態を確認する

  1. キャンバスの[基本表現色]を確認します。新規作成のときに[カラー]・[グレー]・[モノクロ]から選ぶ項目で、ここが[グレー]や[カラー]なら、作画レイヤーは中間調を持てる状態で作られています。
  2. レイヤーを 1 枚ずつ選び、[レイヤープロパティ]パレットの[表現色]を見ます。表現色はレイヤー単位で変更できるので、キャンバス全体の設定と食い違ったレイヤーが混ざります。事故の大半はここに残った 1 枚です。
  3. [表現色]を[モノクロ]にすると[色の閾値]と[アルファの閾値]が出ます。公式マニュアルの説明では、[色の閾値]は「スライダーで設定した色の閾値を境界に、黒と白に振り分けます」、[アルファの閾値]は「スライダーで設定した不透明度の閾値を境界に、黒・白・透明に振り分けます」です。半透明で描いた部分がどちらへ倒れるかは、この 2 つで決まります。
  4. 書き出し設定の[表現色]を確認します。[最適な色深度を自動判別]は「各レイヤーの表現色に基づいて、書き出す表現色が設定されます」という挙動なので、グレーのレイヤーが 1 枚残っているだけで、2 値のつもりの原稿がグレーで書き出されます。2 値で出すなら明示的に選んでください。

直し方

これから描く線
ツールの[アンチエイリアス]は強さを[無し]・[弱]・[中]・[強]から選べます。2 値で作ると決めたなら[無し]です。ペンだけでなく、塗りつぶし・図形・消しゴムなど、縁を作るツールすべてで揃えてください。
描いてしまったラスターレイヤー
レイヤープロパティの[表現色]を[モノクロ]にして、[色の閾値]で黒白へ振り分ける位置を決めます。書き出し時の 2 値化に任せるより、レイヤーごとに閾値を確認しながら倒せるぶん、線の残り方を目で決められます。
グレーで塗った面
レイヤープロパティの[トーン]をオンにすると、[トーン線数]・[濃度]・[網の設定]・[角度]などで網点に変換できます。原稿の時点で網点にしておけば、2 値で書き出しても意図した網が残り、重ね貼りのモアレも原稿の側で確認できます。
ベクターレイヤーの線
公式マニュアルはベクターレイヤーについて「描画したあとでも、ブラシ先端形状・ブラシサイズ・線の色などを変更したり、線を描き直したりできます」と説明していますが、この列挙にアンチエイリアスは含まれていません。確実なのは、レイヤーの[表現色]を[モノクロ]にして閾値で 2 値へ倒すか、[アンチエイリアス]を[無し]にして引き直すかのどちらかです。なおベクターレイヤーでも、[表現色]に[モノクロ]か[グレー]を選べます。
最後に全体を倒す方法
書き出しの[表現色]で[モノクロ2階調(閾値)]を選ぶ方法は PRO と EX の機能で、しきい値は輝度 50% に固定されます。閾値を自分で決めたいならレイヤー側の[色の閾値]を使ってください。

入稿前チェックツールのモノクロ検査で分かること

直したつもりでも、印刷所に届くのは書き出した画像です。入稿前チェックツールの「モノクロ原稿検査」は、書き出した画像を縮小せずに原寸の画素のまま読みます。縮小の補間は 2 値原稿に存在しないはずの灰色を作り、1 画素の細線を消し、網点の周期を壊してしまうので、この検査だけは原寸を通します。見るのは次の 3 つです。

階調の持ち方
「2 値」「ほぼ 2 値(アンチエイリアス)」「グレースケール」「彩度のある画素が混在」の 4 区分で出ます。中間調が狭い面積に収まっていて、しかもその中間調が近黒と近白の両方に接する位置(硬いエッジの縁)にしか無いときにアンチエイリアスと推定するので、2 値化し忘れたグレー原稿と、アンチエイリアスの付いたペン入れを分けて示せます。使用階調数と中間調の面積割合も数値で出ます。
周期網点
原寸の画素から網点の周期と向きを測り、出力サイズ換算での推定線数と推定角度を出します。推定線数の 4 倍が入稿条件の必要解像度を超えるときは、その解像度に対して細かすぎるという警告になります。断定ではなく推定なので、CSP のトーン設定と突き合わせる材料として読んでください。
最小線幅(ヘアライン)
網点に見える領域を除いたうえで、いちばん細い線が出力サイズで何 mm になるかを測ります。0.1mm を下回ると警告が出ます。600dpi の原稿では 0.1mm がおよそ 2.4 画素なので、1 〜 2 画素の線がちょうどこの境目に引っかかります。該当する画素の数も出ます。

彩度のある画素が混ざっている場合も別の警告になります。モノクロのつもりの原稿にカラーのレイヤーが表示のまま残っていた、青鉛筆の下描きや色のメモが残っていた、というのはこの検査で見つかる典型です。画像はブラウザの中だけで処理され、サーバーへは送信されません。

よくある疑問

グレースケール入稿なら、アンチエイリアスは付けたままでいいですか?

構いません。グレースケール指定なら中間調そのものが許容されているので、線の縁の灰色も問題になりません。ただし、グレーで塗った面と、すでに網点になっているトーンが同じページに混在すると、印刷所側の網点化と原稿の網点が干渉することがあります。トーンを使うならグレーの面もトーンに揃えるか、逆にすべてグレーで作って網点化を任せるか、どちらかに寄せると事故が減ります。

2 値で書き出したはずなのに「ほぼ 2 値(アンチエイリアス)」と判定されるのはなぜですか?

JPEG で書き出していないか確認してください。JPEG は非可逆圧縮なので、黒と白の境目に元の原稿には無かった中間の値を作ります。2 値の原稿は PNG のように非可逆でない形式で書き出すのが確実です。形式が PNG なら、変形・拡大縮小・レイヤーの合成のどこかで灰色が生まれている可能性が高いので、レイヤーごとの[表現色]を順に確認してください。

トーンを貼った原稿を自分で縮小してから入稿してもいいですか?

避けてください。網点は周期のある模様なので、縮小の補間で周期が壊れ、原稿には無かったモアレが出ます。縮小して掲載すると分かっているなら、縮小後に狙った線数になるよう原稿側の線数を先に決めてから貼ります。